12月13日、北朝鮮のナンバー2、張成沢氏が粛清されたというニュースが飛び込んできました。何が原因で処刑されたのかは不明ですが、叔母の夫を処刑する、しかもそのやり方があまりにも残酷すぎるということで話題になっています。
独裁政治の恐ろしいところは、人の命が、ひとりの人間の気まぐれに左右されてしまうところです。張成沢氏の粛清によって、人民軍の幹部がナンバー2の座に坐るようですが、独裁政治が続く限り、彼の運命も所詮不安定であることに変わりはありません。9月の終わりから昨日までの約3か月間、この上巻635ページ、下巻698ページの膨大な量の本を読み続けてきて、そのことを痛感しています。
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“粛清”というのは独裁政治につきものですが、スターリンほど自分の周囲の人間を粛清した人間はほかにいないと言っても過言ではないでしょう。最後は自分を支え続けたベリヤですら粛清しようと考えていました。そのことに気づいていたベリヤは、スターリンが倒れたとき、意識のないスターリンに向かって唾を吐きかけ罵倒します。この場面をみると、結局恐怖政治がもたらすものは、相互不信と他者に対する憎悪でしかありません。そういう中でのし上がってくる人間というのは、権力欲にとりつかれた、生まれ育ちに問題を抱えたいびつな人間たちです。
劣悪な生まれ育ちによって他者に対して歪んだ嗜癖を持ったスターリンと、その独裁者に自分の運命を翻弄された重臣たちの物語は、いやというほど人間の醜悪さと愚劣さを見せつけられるのですが、それにも関わらずページを繰るのをやめられなかった自分が、この本の何に惹かれたのか、よく考えてみたいと思いました。