タイトルだけ見るとビジネス書みたいですが、中国の宋の時代にスポットを当て、その時代に確立された体制が世界史的にみてどれほど先進的であったのかを最新の学説を基に解明し、それと対照をなす日本の江戸時代と対比することによって、日本のポスト・モダンのあり方を描こうとした、結構意外性があって刺激的な本です。
これは同時期(2011年11月)に書かれた東浩紀の「一般意志2.0」と同じ動機によるものと言っていいでしょう。
つまり、「日本は近代化を終了し、次のステージ(=ポスト・モダン)に行く」と1980年代初期に浅田彰を始めとする、いわゆる“ニュー・アカデミズム”の学者たちによってさんざん煽られたにも関わらず、現実の社会はいまだに“ムラ社会”であり、ポスト・モダンどころか、近代化さえ達成できないでいる現状に対する苛立ちが根底にある、ということです。
著者は愛知県立大学准教授で日本の近世史が専門の34歳の若手ですが、歴史的成果のみならず、他の領域の学問的成果をも縦横に駆使して読み解く今後の日本の姿は、充分読むに値するものだと思います。