「文藝春秋3月号」もまた村上春樹です。
「文藝春秋」の思惑通りに買わされている感があって、ちょっと抵抗したい気分にもなるんですが、でもやっぱり買ってしまいます。
今回は「独立器官」。
なんだろう、これは?という感じで読んでいくと、昔読んだ短編集「回転木馬のデッドヒート」を思い出しました。これは、他人から聞いた話を書きました、という体裁を取った短編小説です。
ある男が52歳の美容整形外科医の男とその周辺の人たちから聞いた話、という体裁を取っているのですが、渡会というこの美容整形外科医のキャラクターが実に興味をそそられます。面白くて一気に読んでしまいました。
「自分とはいったいなにものなのだろう、最近になってよくそう考えるんです。それもかなり真剣に考えます。(中略)何の説明もつかない裸の一個の人間として世界にぽんと放り出されたら、この私はいったいなにものになるのだろうと」